介護コンサルタントの田中です。
2026年度の地域別最低賃金が、各都道府県で順次発効されました。
今回の引き上げ幅は過去2番目の大きさとされ、時給で働くヘルパーやパート職員の多い介護業界には、特に影響が大きいとみられています。
今回は改定の概要と、介護事業所が今すべき対応を整理します。
2026年度最低賃金改定の概要
2026年9月3日、各都道府県の地方最低賃金審議会による答申が出そろいました。
改定後の最低賃金は全国加重平均で1,177円(前年度比+56円)となり、引き上げ幅は過去最高だった前年度の66円増に次ぐ、過去2番目の大きさとなりました。
ポイントは、中央最低賃金審議会が示した「目安」を33府県が上回る引き上げを答申したことです(東京都などと14都道府県は目安と同額)。
地方でより大きな引き上げが相次ぐ年となりました。
発効日は都道府県ごとに異なり、10月1日から12月2日の間で順次発効する見込みです。
自社の所在都道府県の正式な発効日を必ず確認してください。
最新の各都道府県の最低賃金はこちらから確認ください。(厚生労働省ホームページ)
なぜ介護業界に影響が大きいのか
最低賃金を下回る水準の従業員の割合(影響率)は、全国ベースで2025年度の33.8%から2026年度は42.5%まで上昇すると試算されており、基本給ベースの賃金が低めのサービス業・介護業は、この影響率の上昇をより強く受けやすい業界と言えます。
特に次のような従業員層は影響を受けやすくなっています。
- 訪問介護のヘルパー、デイサービスの送迎・裏方スタッフなど、時給制・パートタイム職員
- 新人・未経験者を時給最低賃金付近で採用している事業所
- 地方・人口減少地域で、従来から賃金水準が他産業より低めに推移していた事業所
こうした事業所では、最低賃金を下回らないよう賃金テーブル全体の見直しが必要になるかと思います。
処遇改善加算・補助金とは別の話として整理する
2026年は、6月の介護報酬期中改定(処遇改善加算の拡充)、2025年12月〜2026年5月分の賃上げ支援補助金、そして10月の最低賃金引き上げと、賃金に関わる制度変更が年間を通じて重なっています。
この3つは目的と性質が異なります。
- 処遇改善加算・補助金:介護職員等の賃金水準を他産業並みに近づけるための介護保険制度・補助金制度
- 最低賃金:業種を問わず、すべての事業者が遵守を求められる法定の下限線
処遇改善加算で賃金を引き上げていても、対象外の職員やパートタイム職員の時給が最低賃金を下回ってしまうケースはあり得ます。
「処遇改善加算を取っているから最低賃金も大丈夫」と混同せず、最低賃金は別途チェックする必要があります。
介護事業所が今すべき具体的な対応
1. 全職員の時給・月給換算チェック
時給制の職員はもちろん、月給制の職員も所定労働時間で割った時給換算額が最低賃金を下回っていないかを確認します。
固定残業代を含む場合は、固定残業代を含まない額で計算をする必要があるので、注意してください。
2. 求人票・雇用契約書の更新
設定している最低時給が新最低賃金を下回らないよう、求人媒体や雇用契約書・就業規則の賃金規定を発効日前に見直します。
3. シフト調整と人件費影響の試算
最低賃金が上がると、介護報酬収入は不変のまま人件費のみが上昇し、収支が圧迫する可能性があります。
年間の人件費増加額を事前に試算し、処遇改善加算の区分見直しやシフト体制の最適化で吸収できないかを検討します。
4. 社保の等級変更の波及確認
時給・勤務時間の組み合わせによっては、社会保険の等級が変わる従業員が出てくる可能性があります。
特にシフトで働くパート職員が多い介護事業所では、事前の周知が必要です。
5. 処遇改善加算の活用で原資を確保
最低賃金引き上げ分を経営体力だけで吸収するのではなく、未取得の処遇改善加算区分がないか、上位区分への切り替えができないかをあわせて検討すると、賃上げ原資の確保につながります。
対応スケジュールの目安
- 9月まで:自社所在都道府県の改定額・発効日の公式発表をチェック
- 発効日1ヶ月前:最低賃金を下回る可能性のある従業員を洗い出し、賃金改定案を作成
- 発効日まで:就業規則・賃金規定・雇用契約書の改定、求人情報の更新を完了
- 発効後:実際の給与計算・勤怠ソフトの設定値を更新し、試行支給でエラーがないか確認
最低賃金違反は民事・行政上のリスクだけでなく、求人・採用活動にも影響します。
発効日を過ぎてから気づくことのないよう、社内カレンダーで管理することをおすすめします。
まとめ
2026年度の最低賃金は全国加重平均で1,177円(+56円)と、過去2番目の大幅引き上げとなり、多くの都道府県が目安を上回る決定をしています。
ヘルパーやパート職員の比率が高い介護業界では、発効日を超えてから最低賃金違反がないよう、時給チェックと賃金テーブルの見直しを早めに進めることが重要です。
また、処遇改善加算や補助金とは別制度であることを正しく理解し、両者を組み合わせて賃上げ原資を確保する視点が求められます。
最低賃金の発効日は都道府県ごとに異なりますので、自社の所在地の最新情報を必ず確認してください。
賃金テーブルの見直し・シフト体制の最適化など、具体的な対応にお困りの際はお気軽にご相談ください。
ご不明点等ございましたら、下記お問い合わせからご質問ください。


コメント